ハローサマー、グッドバイ / マイクル・コーニィ

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)


アニメ化決定
の巨大AAを貼りたいところですが…俺がプロデュースするので金よこせ


id:murashitさんがid:numberock君の見舞いの品としてお貸しになったようですが、number君が超絶リコメンドしてて(http://d.hatena.ne.jp/numberock/20100826/1282827321)ビビっと来たので即買って(ABCにあった)読み始めるも雑用ありつつで長引いてやっと読了。


1975年のイギリスSF、っていう馴染みのない感じ、しかし音楽文化的には愛着のある時代の作品、ってのにまずグッと来る感もあり。
まず世界観は満点、もうかなり前だから記憶薄れてるけど、天体の設定など含め自然への造詣深さが伺われるオリジナリティが椎名誠SFとも近い感慨を呼び起こしたな。ところで地理的な位置関係や風景のスケール感をイメージするのが難しかったってのはある。皆さん明確にイメージできるもんなのかな?そもそも作者がはっきり考えてないかもだけど。


ラスト、ですけどレビューの中には割と脳天気に大逆転勝利!みたいに書いてる人いますが、自分は普通に鬱展開が好きなのもあるけど笑、バッドエンド解釈、ひいては人間(では一応ないが)の業、自然に対する無力さ(ナウシカ的問題意識はないけど)やらなんやらっていう、いかにもディストピアSF的な、相対化する目論見ととりたいな。
まず第四級以下の連中が切り捨てられた展開などは、うわー、やりやがったぜって個人的にアツかったのですが…ラスト以後、例えお偉い連中、ドローヴ他の両者生き延びても、ドローヴ他だけ生き延びても40年後経っていては希望も糞もなくて現実味は薄いわけです。
冷静に考えれば最後のドローヴのモノローグも完全に狂気染みたものを湛えているんですから、その直前の思考が決して確からしさを持つようにも読めないようになってるはずです。(→そして最後の混濁した走馬灯。)
たとえロリンでも精霊のようなファンタジックな存在ではないんですから、まさか40年も大勢の人々を温め続けるような超越的な存在ではないとも考えられます。(精神的感応能力や、ドローヴ説をとったときの、ロリンこそが人々へ寒さへの恐怖を伝えてくれたのだ、というのは本当にロマンチックな事実/整合ですが)
ですから、この大災厄が歴史上初めてであり、やっぱり人類(一応)は無力であった、というのを本当のところとして、しかしドローヴの信じる"伝説"―40年続く闇の中、ロリンが人々を護っていく―そして願わくばブラウンアイズや街の人々も40年後に目覚め、再び一緒に幸せに暮らす―シェルターの連中は、当然生き延びることはないだろう―という、彼の確信、しかし幻想が、その死によってパーソナルな永遠のものとなる…この対比の切なさや虚しさ、儚さが、この物語をより美しくさせてくれるのではないかと思うのです。
そして何より!(今すごいハッ!としたけど)例え生き延びても、40年経ってしまった時点で、ドローヴとブラウンアイズの若々しい愛が育まれた最初で最後の一度きりの夏のような瑞々しさは、決して二度と取り戻すことはできないのです!これはこの物語にとって決定的に悲劇的で、象徴的でありましょう。


(帰宅後追記)
帰ってからはてなでのレビューかなり遡って読んでみてたけど、自分相当ひねくれてるのかって気分になってきたぞ笑、あんまり深く考えてない人も多いみたいだったけど。
種明かしが一番良くまとまってるここ(http://d.hatena.ne.jp/me-sakura/20080711/p1)なんか読んでて気付いたけど"そのあいだは歳もとらなかったはずなのだ。"っていう言及は見逃してたな笑。先に書いてた時は、青春恋愛小説として、50代の男女の未来を想像せざるを得ないのは敗北だろう、という想像に支配されてたところはあり笑(映画『男と女2』を想起…)
にしても、 やっぱりルサンチマンで屈折してる私のようなペシミスティック、ニヒルでハードコアなSF者の皆さんや、喪失ゆえの美しさに魅力を感じる人はバッドエンドととり、極めて健康でファンタジー寄りな皆さんはハッピーエンドととりましょうということでひとつ笑

さて物語はおいといて、当然キャラの魅力にも言及せねばなりません。
女の子二人、ブラウンアイズとリボンは皆さん萌え萌え言いまくってるのでいいでしょう笑
個人的にはやはり最低にも身を堕としたリボンにゾクゾク来てしまうところがありました…(バタフライ・エフェクトよろしく)
あとドローヴの両親、特に母親のこいつイっちまってるな感が好きでしたね笑
そして何より!私的に一番ありありとイメージできたのがウルフで、最近色んなアニメで耳にしてグッときてる陶山章央さん(http://www.sigma7.co.jp/profile/m_17.html)ボイスを脳内であてずにはいられませんでしたね…。
それととあるレビューで書いてあって確かに!って思ったけど、ラノベ的リアリズムと同時に富野由悠季的なアツさとも近いよね!と。(そもそも復刊時、ラノベクラスタで超盛り上がってたんだなぁと。)
ドローヴにカミーユ(CV:飛田展男)的要素は確かに感じてた笑
いややっぱりこれはアニメ化でしょう…!
しかし相当にエロゲ的でもあるってのも言ってる人覆いですし上手く翻案すれば余裕で泣きゲーと化しそうですね…。


ともかく皆さん買って読んで続刊願いましょう。